微温湯〜ぬるまゆ〜
高校を卒業し、大学生になって間もない頃、私にも一人前に初めての恋人が出来た。

男がどんな生物であるかを知った。嘘のつき方も上手になった。
酷い失恋も、友情と恋の狭間で悩むこともした。
人前で涙を流す素直さも覚えたし、甘えることの意味もわかり始めた。

いろんなことを経験して、いろんな人と出会い、別れ、歳を重ねるごとにどんどん考え方が変わっていった。いい意味での進化を繰り返していたはずだ。

そして、数年ぶりに再会した時、私は藤井君に恋をした。


大学4年生になったばかりの春。

一週間彼が私の下宿で過ごしたことがある。
地方大学に通う私の下宿を拠点に、観光地を巡るために。

私は研究が忙しくなったばかりで、通常毎日学校に通う必要があった。バイトもあった。だから、彼が滞在している間もほとんどが放置状態で、空いた時間のみ一緒に過ごすことになった。

学年は違っても一緒に過ごす時間が長かったふたりだから、共にに過ごすことになっても緊張しなかったし、話に詰まることも無かった。奇妙な共同生活。

それに体育会系のクラブに身を置いてきた私は、意識していない男女が一つ屋根の下で過ごしても何も起きないことを良く知っていたし、いわゆる雑魚寝という合宿気分が大好きだった。
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