微温湯〜ぬるまゆ〜
二人暮しできる広さのアパートの家賃は、田舎と言えどもそう安くは無い。
しばらく引っ越す気力がもてないからと、バイトの量を増やして新しい年度を迎えた春だった。

彼女のことが原因で、仲良かった彼とも疎遠になり、なんとなく引きこもりがちになった。広い部屋にポツンとひとりで過ごすことが増えてきた。

そんな時、藤井君がやってきたのだ。


毎日、地図を片手に、私の4WDで出かけていく彼。
私はバイトや講義に勤しんで、終わると合流した。
楽しかった。
毎日笑っていた。


滞在5日目。
バイトも学校も休みだったのでその日は一日一緒に過ごすことになった。

ワクワクしながら隣町にある農場に出かけて、おいしいワインを見つけた。

ワインに似合う食事を作ろうという目標を見つけた二人は、おいしいハムと野菜、それにフランスパンと強力粉と鶏卵を買いこんで帰宅した。


私は料理教室で習ったばかりの生パスタを麺から打って、ラザニアを作った。

彼は、野菜とハムで、おいしいサラダも作った。得意気に、温泉たまごをあしらった。


朝早くから移動したり、作業したりで疲れていた私は、慣れないワインにいつもと違う酔い方をしていた。
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