微温湯〜ぬるまゆ〜
食事を済ませて、後片付けをしてから、ほろ酔いのまま床についた。

4月というのに少し肌寒い夜だった。

別々の布団に入っていたけど、私はふざけて、隣の布団にもぐりこんだ。

「あったかい。」

「仕方ないなぁ。あたためてやるか。」
そういって藤井君は背中から抱きしめてくれた。

二人とも飲み過ぎてはいなかったし、奔放になっていたわけでもない。

だから嬉しかった。
彼の温度に、力が抜けた。
わけもわからずに涙が流れてきた。

少しだけそのまま眠った。彼の静かな寝息が聞こえてまた眼をあけたとき、私は振り返って藤井君にキスをした。

ほろ酔いとぬくもりと、乾きかけの涙で、今までに味わったことの無い焦燥感に駆られた。


どうしてこんなにあったかいんだろう。

心の中でつぶやいた。
その時彼はもう一度、ぎゅっとしてくれた。

私はもう一度彼にキスをして、微温湯につかっているような感覚の中で、ふたりはひとつになった。
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