思い出の前に
「あ〜もう!あんたがガンガン押してかないと、康仁にあの子取られちゃうよ!!」



桐谷のこの言葉を聞いた安堂ははっとしたが、次の瞬間にはうなだれていた。



「俺が押しても無理だよ。俺より康仁の方がいい男だし」



安堂の言葉を聞いて、桐谷は今まで言えなかった事を言う決意をした。



「あの子からは口止めされてたけど、あんたには言ってあげる。あのね、あの子はあんたからも康仁からも好かれてるって知ってるよ。知ってて苦しんでる。」



桐谷もまた苦しそうに言った。



「苦しんでる…?」


「…あの子は…康仁が好きなんだよ」
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