思い出の前に
安堂は、ショックだった。



ミサは岡部を好きになるだろうとは思っていたが、自分の想いがミサにとって苦痛になっているとは思わなかった。



そもそも自分の想いをミサに気づかれているとは思っていなかった。



「俺のせいでアイツは苦しんでるのか…」


「でもね、あんたの気持ちが重いとか迷惑とか思ってる訳じゃないんだよ。


康仁の事が好きだけど、あんたの事もすごく大事だから、傷つけたくなくて苦しんでるの。


あんたの気持ちが嬉しいから苦しんでるの」



安堂は桐谷の言葉に胸が詰まった。



大事だから苦しい―



嬉しいから苦しい―



安堂は自分がどうすればいいのかわからなくなった。
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