思い出の前に
「あの…先程からここにいらっしゃいますが、当店にご用でしょうか?」



見かねた店員がわざわざ外に出てきて、岡部に声を掛けた。



「えっ?あぁ…あの…指輪を探してまして…でも、なんだかちょっと入りづらかったもので…すいません…」



岡部が吃りながらそういうと、店員は少し怯え気味だった表情を営業用の笑顔に変えた。



「そうでしたか。では中へどうぞ」



店員が岡部を店内へと促した。



店内は白とベージュを基調にしてあり、清潔感に溢れていた。



ショーケースをざっと見回すと、ホワイトゴールドとプラチナの商品が多い事に気がついた。



デザインはシンプルな物が多く、色の濃い宝石がついている物は少なかった。



ここなら、ミサが気に入るものが見つかるかもしれない。



岡部は、恋人のミサに渡す指輪を熱心に探し始めた。
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