思い出の前に
「もしもし」



岡部康仁は緊張しながらミサに電話を掛けた。



「何?」


「ちょっと話があるんだ」


「うん」


「電話で話す事でもないから、飯食いに行こ」


「わかった」



岡部がミサを呼び出したのは、もちろんプロポーズする為である。



ちゃんと言えればいいのだが。



待ち合わせ場所は、2人がよく行くイタリアンのお店だった。



イタリアンと言っても、この店では客にフォークやナイフを使わせずに、すべて箸を使わせている。



高級レストランが苦手な岡部でも、気軽に入れるお店なので気に入っていた。
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