思い出の前に
「待った?」



ミサが岡部に聞いた。



「ちょっとな」



ミサは岡部の気取らない素直な反応を愛おしく思った。



2人で店の中へ入ると、予約席へと案内された。岡部が昨日から予約していたからだ。



予約席にはすべて仕切りがあり、隣の席の話し声はほとんど聞こえなかった。



ここならちゃんと話が出来る。



岡部はそう思うと、また少し緊張した。



料理を食べ終わり、食後のコーヒーを飲んでいると、ミサの方から切り出した。



「ねぇ、話って何?」



安堂といい、岡部といい自分から呼び出しておいて、相手に話を切り出させるな。
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