思い出の前に
花嫁の控え室のドアを少しだけ開けると、ミサの姿が見えた。


岡部は、絶句した。



あまりに美しくて動けなくない。



「誰?」



何者かの気配を感じたのか、ミサがドアを開けた。



「康くん、自分の嫁を覗くって意味わかんないから」



ミサは微笑みながら言った。



「ミサ…キレイだよ」



そう言った岡部の目には少しだけ涙がたまっている。



泣くのはまだ早い。



「ねぇ康くん。あたしはもうミサじゃないよ」



ミサは岡部のたまった涙を拭ってやりながら言った。



「あぁ…そうか…そうだな」


「あたしの名前、呼んで?」



ミサは岡部の両手を包み込むように握った。



岡部の表情は、泣き顔から穏やかなものに変わっている。


















「アンリ、愛してる」

「あたしも」
















ミサ―



旧姓、三沢アンリ。
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