思い出の前に
「どういった感じのものをお探しですか?」



先程まで岡部の事を冷ややかな目で見ていた女性店員が、今度は惚れ惚れするような笑顔で岡部に話しかけた。



「ん〜、出来るだけシンプルなのがいいんだけど…」



岡部は、女性店員と目を合わせずに、ひたすらショーウィンドーの中を見ながら返事をした。



「でしたら、こちらなんていかがでしょう?」



女性店員が差し出してきたのは、ホワイトゴールドの太目のリングの中央にリングの幅と同じ直径のカット数の少ないダイヤモンドが埋め込まれている物だった。



岡部は一目でそれを気に入った。



「あの、コレください」


「かしこまりました。サイズはどう致しましょう?」


「えっとー…7号かな」


「この指輪を受け取られる方はすごく細い指なんですね。羨ましい」



女性店員の笑顔が営業用のそれとは微妙に違うと岡部は思った。



なんとなく親しみを感じる笑顔だ。
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