HALF
―――数年前までは、この季節はとても心踊るものだったように思う。
新しい友人や教室。
窓から見える景色。
そのどれもが、新鮮で輝いているように見えた。
中学二年生の僕らにとって、それはひとつの行事でしかなくなってしまったが。
何百回と通ったこの道を、今日も全くいつも通りに歩く。
いつもと、何ら変わらない。
そのはずだった。
(ん…あれは…)
荒げた声を響かせているのは、いつもの不良二人組。絡まれるといろいろ面倒なので、迂回して帰ろうと思ったその矢先、
「お前さあ、俺らが声かけてやってんのに何でスルーするわけ?」
女の子が絡まれていた。
「大体さあ、見かけたことないけど君どこの子?」
不良の一人が女の子の腕を掴んだ。
「あ…!ちょっと」
叶うはずもないのに咄嗟に駆け出してしまった。
こういう時、自分の無意識な正義感に心底呆れてしまうんだ…。
もういっそ、あの子だけ逃がしてしまえばいいかと諦めた瞬間、
女の子が静かに口を開く。
「…邪魔」
――――え?