恋するキモチ
「松坂さんとは知り合い?」

聞かれて京子は、いえ、と首をふった。

「誰かと間違えてたのかな」


…知り合いじゃない、けど。
覚えてたんだ。


食券を食堂のおばちゃんに渡すと、おばちゃんは少し驚いたような顔をした。

「最近の子は、女の子もよく食べるんだねぇ」

けらけらと笑いながら、おばちゃんが差し出してきたのは、こんもりこれでもかというくらいに盛られたもりそばだった。

「へ?」

自分ではかけうどんを買ったつもりだったのだが、どうやらうっかり違う食券を買っていたようだ。

「…いただきます」

ぱしっと両手を合わせて言うと、心配そうに山下が声をかけてきた。

「大丈夫か?」

「とりあえず…いけるとこまで頑張ってみます」

ふぅ、と息をつくと、ずるずるっと豪快にそばを食べ始めた。

「あ、おいしい」

思っていたよりおいしいおそばに、京子は少し驚いた。

「意外といけるぜ?ここの食堂」

そう言って、山下も海老フライ定食を食べ始めた。

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