恋するキモチ
お酒も程よく回ってきて、隣には(ちゃっかり)成田のいる席に座り、京子はとても上機嫌だった。

「杉本さんって、彼氏いるの?」

聞かれて思わず、

「それが…いないんですよ〜」

スルッと答えてしまった。


あ…やば……


実際には大学時代に知り合い、付き合って3年になる彼氏がいる。憧れだった成田を前にしたせいか、思わず『いない』と嘘をついてしまった。

「またまたぁ、ほんとにいないの?」

聞かれて私は頷いた。もちろん、ここで嬉しそうにするわけにはいかないし、とりあえず残念そうな顔をしてみた。

適当にごまかすための理由を並べ立てていくうちに、そんなことを言っている自分が恥ずかしく感じられてきた。


あぁ…私バカじゃない?
顔が熱い…


「そういや、先輩はどうなんすか?」

「はっ?」

山下の質問に、顔を赤くしてうるさいと成田が怒っている。

「成田先輩、彼女いないんですか?」

聞くと、成田は少し顔をしてひきつらせた。


これは…マジでいないっぽい!?


「じや、仲間ですね!」

笑うのは失礼かと思ったものの、嬉しすぎて思わず顔がほころんでしまった。

「せんぱぁい?春ですねぇ」

からかうような満面の笑みを浮かべる山下は気にせず、京子はご機嫌で成田の横で飲み続けた。
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