恋するキモチ
「…なにため息なんてついてんだよ。ため息つきたいのはこっちのほうだっての!」

洋司の切れた口調に、思わずびくりと肩を震わせた。

「ごめ…」

「謝るより先に理由を言えよ!わけもなく別れたいって言われて、はいそーですかって納得なんかできるかよ」

洋司に言われて、私は思わず俯いた。


成田さんに彼女がいないから、別れてほしいなんて言ったら、本気で殺されそうだわ…


うぅん、と心の中で唸ったあと、意を決した顔で、洋司に向き合った。

「理由は、他に好きな人がいるから」

「…京子、その話は前に終わっただろう?」

「は?」

殴られることも覚悟の上で、思い切って言ってみたのに、返ってきた答えは思わぬものだった。

「恩人だっていうあの刑事のことだろう?だけどそいつのことは忘れるって話で終わったじゃないか」


…なんでここで成田さんのことに結び付くわけ?成田さんのことだなんて言ってないってのに!ここで勝手に結びつけられたら困る!本当にそうだから、否定したら嘘つくことになっちゃうじゃない!


「京子がそいつのことをすごく好きだってことは俺も知ってるよ。だけど、俺は、ずっと京子のことを大事に思ってきたし、そうしてきたつもりだ」

洋司に言われて、思わず顔が引きつりそうになる。

「…なんで、そこで成田さんが出てくるのよ!」

京子の言葉に、洋司はきょとんとした顔をする。

「なんでって…だって、お前が他に好きなやつがいるって言ったら、そいつのこと以外、誰がいるってんだよ」

洋司の言葉に、私は口をただパクパクと動かしていた。
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