恋するキモチ
「京子ちゃん、すごいね」

近くに人がいないかどうかを確認しながら歩いていると、感心したように山下に言われ、首をかしげる。

「何がですか?」

そんなにすごいと言われるようなことはなにもしていないが、と思っていると、山下が少し苦笑しながら続けた。

「いやいや。初めての現場で、あれだけ物怖じせずに遺体を調べたりできるってすごいよ。大抵、あの雰囲気や、殺人現場の独特の臭いなんかで吐いたりするんだけどね。しかも京子ちゃん、女の子なのに。だからすごいなって」

言われてはっと気づく。


もしかして…成田さんに引かれてたらどうしよう!?
そうだよね、ぜんっぜん女の子らしくなかった!
ていうか、頭がへこんだ血を流してる遺体を前にして平然としてるって、おかしい!?


一瞬にして血の気が引いていくのがわかった。

「京子ちゃん?」

「うへぃ!?」

山下に呼ばれて、思わず変な返事になる。一瞬、目が点になり、その後思い切り笑われた。

「うへぃってなに!もー、どうしたの?何か考え事でもしてた?」

山下に言われて顔が熱くなる。


あ…穴があったら入りたい……


小さなため息が漏れた。

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