恋するキモチ
「お前は一体、何がしたいんだ!」

男には聞こえないように、しかしドスのきいた声で叱られ、思わず京子はびくりと体を震わせた。

「何って…」

「さっきから聞いてみてりゃ、一体事件となんの関係があるってんだ!」

成田の言葉に、京子は不思議そうに首を傾げた。

「何って…犯人の特定ですけど」

「そうだろう関係な…犯人の特定だと?」

成田の言葉に、そばで聞いていた三井が近寄ってきた。

「おい、杉本。お前、何考えてんだ?」

まだ推測の域を出ないんだけどなぁ、と思いつつ、京子は口を開いた。

「いえ、なんていうか。あの男の人が、犯人じゃないかと思ったものですから」

『は?』

京子の答えに、見事に3人の声がハモッた。

「ただ、あの男の人と、被害者が、知り合いでないと成り立たないんですよね、この仮説。だからちょっといろいろ聞いてたんです」

その言葉を聞いた3人は、互いに顔を見合わせていた。

「…それなりの根拠はあるから、そう言ってるって思っていいんだな?」

成田の言葉に、京子はこくんと頷いた。

「わかった。それじゃやってみろ」

「先輩!?」

「成田!?」

山下と三井が、驚いたように成田の方を見る。京子は少し顔を赤らめながら、はい!と返事をして、男のところへと戻って行った。

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