恋するキモチ

はぷにんぐ

「いらっしゃい…あら、珍しい」

杉本を連れていった先は、こじんまりとしたカウンターのみの小料理屋で、何度か三井や山下と一緒に来たことがあった。

値段は良心的、料理は女将の手作りでそこらの居酒屋なんか目じゃないくらいに美味い。大抵、お客は2・3人くらいしかいないから、静かにゆっくりと飲むにはもってこいの店だ。

「先週も山下と一緒にきたぞ?」

前に来てからそんなにたっていないのに、何がそんなに珍しいんだ?と首を傾げる。

「成田さんが女性の方を連れてくるなんて。初めてじゃない?」

クスッと笑いながら、女将がからかってくる。

「なっ…!?ただの同僚だ!」

思わずそう叫んだ後、ハッと我に返る。


しまった!


恐る恐るちらっと杉本の顔を見るが、ニコニコと笑っていて、特に変わった様子はなかった。


…よかった。


かりにも『付き合うか?』と言った相手を目の前にして、ただの同僚と言うのは失礼な話だ。

ほっと胸を撫で下ろし、椅子に座った。



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