恋するキモチ
ゆっくりと杉本といろんなことを話しながら飯を食べ、酒を飲んだ。
小さい頃の杉本の話や、学生時代のこと。
趣味に興味のあること、好きな食べ物に嫌いな食べ物。

正直、自分でもこんなにスムーズに会話が続くと思わなかった。

「今日の成田さん、なんだか楽しそうですね」

杉本が少し席を立ったとき、女将が嬉しそうに呟いた。

「そうか?」

「ええ。杉本さんのこと、好きなんですか?」

箸でつかんでいた煮豆を思わずカウンターの向こうに飛ばしてしまう。

「な…!?」

突然の言葉に、なんと答えていいかわからず、思わず赤面した。

「見てればわかりますよ」

くすくすと笑う女将に、俺は小さくため息をついた。

「ま、確かに俺は、杉本が気になってるかもな」

「あら。今日はやけに素直なんですね」

にっこりと笑って、熱燗を差し出してきた。

「…頼んでない」

怪訝そうな顔を向けると、可笑しそうに笑う。

「お酒の力を借りたいときも、あるんじゃないですか?」

そう言われて、思わず言葉に詰まった。

「あ、杉本さん。お帰りなさい」

「ただいまです…あれ?成田先輩、熱燗飲むんですか?」

杉本に言われて、口をもごもごさせる。

「私もご一緒していいですか?」

にっこりと笑う杉本に、女将はお猪口を渡した。

< 42 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop