恋するキモチ
楽しい時間はあっという間だとよく言うが。
ちょっと予想外の事態になっていた。


「あら?そういえば杉本さん、終電は大丈夫?」

「へ?」

女将に言われて、杉本は慌てて携帯を取り出し、時間を確認する。

「あぁ!」

困ったような表情。今にも泣きそうな顔をしていた。

「終電…もしかしてのがしたか?」

恐る恐る聞いてみると、杉本は小さく頷いた。

「あら、それなら成田さん、泊めてあげたらいいじゃない」

「は?」

「成田さん、お家広いって山下さんいってたもの。それに、ここからそんなに離れていないんでしょう?」

「な、何言って!?」

女将はニコニコ笑っているが、明らかに楽しんでいる顔をしていた。

「杉本さんは、成田さんのお家で始発が動くまでいさせてもらうのは嫌かしら?」

女将に聞かれて、杉本は戸惑いながらも、首を横にふった。

「す、杉本!?」

思わず声が裏返る。

「杉本さんもいいって言ってるんだし。泊めてあげてもいいんじゃないかしら」


そうやって女将に言いくるめられ、今、俺の家に杉本が、居る。
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