恋するキモチ
「あの…着替え、終わりました」

「ぅわぁ!」

急に後ろから声をかけられて、思わず驚く。

「ご、ごめんなさい」

杉本が慌てて謝ってくる。

「い、いや…俺の方こそ悪かった」

なんとなく、変な空気が場を包む。

「そうだ、布団。こっちに布団しいてあるから、こっちで寝るといい」

「え?」

不思議そうな顔をして、杉本が見つめてくる。

「お前も明日は出勤だろう?少しでも寝ておいたほうがいい」

「えっと…その……」

少しもじもじとしながら、杉本が聞いてくる。

「成田先輩は…どうするんですか?」

聞いてくる杉本に、俺は苦笑いを浮かべながら答えた。

「あぁ、俺はこっちのソファで寝る」

「え、そんな…」

困惑した表情になる杉本に、俺は笑って答えた。

「安心しろ。寝込みを襲ったりはしねーよ」

そういうと、杉本はくすっと小さく笑った。

「でも、お布団は…」

「いや、本当はもう一組あるんだが、クリーニングに出しててな。今、1組しかないんだ」

「え!そんな、私ソファーで寝ます!」

そういう杉本の頭を軽く撫でる。

「何言ってんだ。客に、ましてや女の子にそんなことをさせられるか」

そういって、寝室へと連れていく。

「でも…!」

「明日も早いんだ。ほら、寝ろ」

そういって無理やり布団に寝かせると、電気を消した。

「…おやすみ」

「おやすみ…なさい」

俺は寝室を後にした。
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