恋するキモチ
都が出してきていた熱燗を少し飲んでいると、ふと、思い出したような顔で都が聞いてきた。

「あら?そういえば杉本さん、終電は大丈夫?」

「へ?」

まさかのこのタイミングで、都に言われるとは思っていなかったため、思わず間の抜けた声が出た。


い、いけない!時間確認しないと!


慌ててかばんの中から携帯を取り出す。

「あぁ!」

まだ終電には頑張れば間に合う時間。


都さん…言うの早すぎ……


がっくりとうなだれる私に、心配そうな顔で成田さんが声をかけてきた。

「終電…もしかしてのがしたか?」

成田の言葉はまさに神様のお告げではないかと思った。
頑張れば間に合う。でも、頑張らなかったら間に合わない。
ならばいっそのこと…!


意を決して、私は小さく頷いた。

「あら、それなら成田さん、泊めてあげたらいいじゃない」

「は?」

「成田さん、お家広いって山下さんいってたもの。それに、ここからそんなに離れていないんでしょう?」

「な、何言って!?」

「杉本さんは、成田さんのお家で始発が動くまでいさせてもらうのは嫌かしら?」


神様仏様都様!
私、あなたに一生ついていきます!

少しだけぎこちなく首を横に振ると、成田が驚いた様子で名前を呼ぶ。

「杉本さんもいいって言ってるんだし。泊めてあげてもいいんじゃないかしら」

女将の粋な計らい(?)により、思わぬ展開を迎えることになった。

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