恋するキモチ
…田中ってどの田中?


友人、知人、同僚。
田中さんに該当する人が、自分の知る限りでは片手ほどの人数がいる。

「あ、あの、私は田中先輩の同僚で」

必死に説明をしてくれる。おかげで、彼女の同僚ということはわかったが、それでもまだ絞れたわけではない。

「あの、田中なにさんのことですか?」


轟だとか、東雲だとか、なかなか被らなそうな苗字ならまだしも、田中はそこそこ多いと思うよ?


説明をしている彼女を遮り、私は聞いてみた。
すると、彼女は顔を赤らめて、すみません、と謝りながら答えた。

「田中洋司先輩です」

言われて目を見開いた。


あ、そうだった。
あいつも苗字は田中だったわ。


思い出したように京子は頷くと、どういう要件なのかと、改めて彼女に問いかけた。

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