恋するキモチ
これまでにないくらい必死で走ったおかげか、意外と余裕で到着した。
時間が少しできたおかげで、1課へ向かう前にトイレで身だしなみを整えることができた。

先輩の三井さんに紹介されて、自己紹介をする。
深くお辞儀をして、頭を持ち上げた時、ふと、奥に見覚えのある顔が見えた。

「…あ……」

三井に連れられて行った先は、見覚えのある人物のそばだった。


もしかして…もしかして!



「山下」

三井が声をかけたのは、お目当ての人物の隣に立っている青年だった。
先輩の仕事ぶりを見て学べということらしい。

「山下修一です。よろしく」

「杉本京子です!よろしくお願いします」

お辞儀するとにっこりとさわやかな笑顔を向けられた。

「おい!そんなんで後輩の面倒みれんのか?」

声の主を見る。
ずっと会いたかった、あの人がすぐ目の前に立っていた。


うそ!ほんとに会えるなんて!しかもこんなすぐそばで…!


心臓の高鳴りが止まらなかった。
静まれ、と必死で自分に言い聞かせた。

「はじめまして!杉本京子といいます」

うるさいくらいに心臓の音が耳につく。

「はじめまして。成田吉安だ。よろしくな」

優しく微笑む成田の顔に、思わずうっとりしそうになるのを必死でこらえた。

「はい!成田先輩!」

嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
本当に、親の反対を押し切ってでも、がんばって警察官になってよかったと思った。
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