ぬくもりに触れたくて。
「だめ!!!」

やっと届いた。

「……………ま…ろん?」

触れた手は薬を落とす。
最後の睡眠薬もこれで無くなった。

信じられない顔で、私を見つめる。

「うそ…まろん…俺、夢の中に居るのかな?」

「夢じゃないよ。
陸登、ほら、手をかして?」

そっと、触れる。

脈と温もり。

「やっとあなたに触れた。ずっと、傍に居たんだよ?」

「まろん…っ…!!!」

強く抱き締められる。

いつものように

私が大好きな甘い香り。

「じゃあ、全部俺の行動も見てたんだね。」

「見てたよ?陸登がずっと泣いてる姿。」

「君が居ない毎日を考えたくなくて…なんとか頑張って探してたんだ。
まろんの香りや温もり。」

伝わる。
体の中から温かくなる。
あなたの体温。

「うん、私もやっと…触れた。
ずーっと陸登に抱きしめて欲しかったの…。」

「まろん…優しい香りがする。大好きな君の香り。」

ぐちゃぐちゃになった陸登の顔。

涙で濡れてる。

やっと拭ってあげられる。

この手で、あなたが流した沢山の悲しみの涙を。
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