recollectionⅡ‐遠い音‐



  ♪


「あら、久し振り」

「……失礼ですが、どちら様で…?」

入場者の名前を書く名簿に向かっていたら
近くにいた女性が声を掛けてきた。

「やぁねぇ!家庭科の!」

「………あぁ」

あまりピンとこなかった。
インフルエンザ対策だろう、
鼻を覆い隠す大きなマスク。

あまり顔が良く分からなかったが
確かに思い出した。

「忘れちゃ駄目だよぉ」

怜佳が私に言った。

「あはは、ごめん」

そう言って、
近くに用意されていたスリッパを出した。

「では、失礼します」

先程の女性教諭に
私は一礼した。

怜佳も私の隣に並んで
軽く頭を下げる。



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