心の距離
建物の横にある出入り口に向かう従業員達。

「その原チャリ、ことみちゃんのなんですか?」

何気ないヒデの言葉に、答える大島さん。

「そうだよ。後3ヶ月はここにあるよ」

「後3ヶ月ですか?」

「一年契約だったんだけど、春まで伸ばして貰ったらしいよ。だから、リーダーなのに、両替機の鍵を持たせて貰えないんだって」

「そうなんですか!?」

「後3ヶ月だから、あんなに頑張れるんだろうな?普通だったらとっくに辞めてるよ。休みの日に起きた事も自分の責任になるし、小さい店のクセにグチグチうるせぇし、マネージャーは理不尽だしな」

大島さんの言葉に、足元が崩れ落ちていく感覚に襲われた。

後3ヶ月で彼女が居なくなる…

凄く気になる存在なのに、彼女は消えてしまう…

もう少しで完全に好きになりそうだったのに、彼女とは夢の中でしか会えなくなる…

「おう。行くか」

大島さんの言葉で我に返ると、バイトの3人とマネージャーが歩み寄ってきた。

「ことみ、いい加減観念して行こうぜ!」

しつこ過ぎる位に言い寄る大島さん。

「行きません。明日、朝早いし」

頑として断り続けることみちゃん。

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