心の距離

「嘘つき？」

「あんたの彼女、超嘘つきだよ？スカしてるし、ノリ悪いし！あんなんだから男にダマされんだよ！今だに繋がってんでしょ？ホント頭悪過ぎ！あんたも大変だね。二股かけられてるよ？別れれば？」

黙ったまま携帯を畳み、彼女に手渡した。

「助かりました。ありがとうございます」

寂しそうに小さく告げる彼女。

大島さんから聞かされていたせいで、付き合いが悪いのは知っていた。

軽そうな電話相手の女性が、ノリが悪いと言っていたのも頷ける。

ただ、どうしてもわからない事。

『サトくんって誰？』

『ダマされるってどう言う事？』

一つの質問を投げ掛ければ、全て答えてくれるだろう。

もし、『サトくん』が彼氏だったら…

ダマされていると知っていても、付き合い続けているとしたら…

無理に聞き出して、あっけなく振られる勇気も無ければ、無理矢理聞き出す度胸も無い。

もし、本物の彼氏だったら聞けたんだろうけど、電話を切った時点で彼氏で居る時間は終わってしまった。

…結局、何も聞けないのか…

大きくため息をつき、彼女に切り出した。

「帰りましょうか…」