心の距離
「うん。絶対に飼いたくないけど…」

「どうして?」

「どうしてって…ニワトリになっちゃうから?」

「死んだら食ったって思われるから?」

僕の言葉に彼女は突然噴き出し、笑いながら答えてくれた。

「違うの。小さい時は可愛いけど、大きくなったら怖いでしょ?あ、コーヒー、アイスとホットどっちが良いですか?」

「なるほどね…アイスで。っつうか、敬語やめようね?」

「はい。あ…いつものクセが出ちゃうなぁ」

小さく呟きながらキッチンに向かう彼女。

ほんの少しでも、彼女に笑顔が戻ってきてくれた事が、凄く嬉しかった。

氷の入った二つのグラスに、アイスコーヒーを入れてきてくれた彼女。

「ガムシロいります?」

「いや、ブラックで良いよ。…隣おいで」

勇気を振り絞りながら小さく告げると、彼女は隣に腰掛けた。

「…話したく無かったら、話さなくて良いよ」

「ううん。全部話す約束だから…」

膝を抱えながら小さく呟く彼女に、小さく聞いた。

「…タバコ、良いかな?」

「うん。ビールと缶酎ハイもあるよ?美優のだけど…」

「缶酎ハイ貰って良いかな?」

「ちょっと待ってね」

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