心の距離
「何とか立ち直って欲しくて…元に戻って欲しくて、子供が出来たって嘘吐いたの。そしたら、『ふーん。降ろすだろ?』って…聖、実家が神社で、お父さんが神主でお母さんが巫女さんなんだって。凄く順序に厳しい家庭だから、出来ちゃった結婚なんか出来る訳無いって言われちゃった。その時、はじめてこの人ダメだなって思った。気付くの遅過ぎだよね。2年も一緒に住んでてやっと気付いたの…携帯の番号変えて、引越ししたんだけど、就職した会社に来られてクビになっちゃった。一生この人から逃げられないんだって諦めてた。お金渡せば会社まで来ないから、毎月会って、お金渡して、体重ねて…もう、彼氏なんかいらないって…恋なんかしないって思ったの」

ハッキリと言い切った後、彼女の頬に涙がこぼれ落ちた。

「ごめんね。泣くつもり無かったのに…本当にごめん」

「…いや、良いよ。…警察には言った?」

「うん…でも、掛け合ってくれなかった。当時、私名義の家に住んでたから、喧嘩したのかな位にしか思われなかったみたい…」

「酷いね…それ…来月も会うの?」

「わかんない…会社に来られたらって思うと、会わなきゃいけないのかな?って…」
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