COL'【桃】ひ・み・つ☆桃色恋 †with響紀様†
<side 椿>

 美鈴ちゃんが去ってから瞳子ちゃんは一層寂しそう。

 そんな顔されたら母性本能くすぐられちゃうじゃない。

 「せっかく来たんだから、楽しもうね♪」

 彼女の笑顔が見たくて、頬っぺをムニュムニュツネって変顔を作っちゃった。

 みんなも釣られて笑っていた。

 一瞬だけ見せてくれた彼女の笑顔が儚げで切なく感じる。

 瞳子ちゃん、どうしたら振り向いてくれる?

 とりあえず、この大人数から二人っきりにならないことには……ね。

 ま、それはじっくりと時を刻んでからでも遅くはないわよね。

 呑気に瞳子ちゃんの様子を観察していると――。

 「心愛さん、ちょっといいですか?」

 「ええ。私も貴女と話したかったのよ」

 今、目の前でされている会話に釘付けになって聞くしか出来ない自分に焦りと絶望が広がっている。

 私は知らなかったの。

 彼女が心愛と秘密ごとがあるなんて。

 少し前まで私だけを見てきた心愛が、今は年下の彼女に目を向けている。

 瞳子ちゃんを誘惑していいのは私だけよ。

 そんな事、みんながいる前で言い放てるわけもなく。

 彼女たちが雑踏の中に消え行くのを唯々見ていた。

 「椿~、とりあえずミラーハウス行こうよ」

 取り残された彼女たちによって落ち込まずに済んだのには、感謝しなくちゃね。




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