COL'【桃】ひ・み・つ☆桃色恋 †with響紀様†
<side 椿>

 小さな足音が聞こえたから、私てっきり高村が追いかけてきてくれたのかと思ったの。

 そんな事あるわけないのにね。

 泣き顔なんてみられたくないから、必死に涙を引っ込めたのよ。

 そしたら、顔を覗かせて来たのはたしか一年生の――。

 「なんだ、会田先輩じゃないですか。驚かさないでくださいよ」
 
 彼女とは委員会活動で顔を合わせた事があるから苗字と顔はわかるけど、下の名前なんだっけ?

 努めて明るく挨拶をしているつもりなのに、彼女が心配そうに覗き込んでくるの。

 やだな、涙拭取れていなかったんだ。

 理由をあれこれ聞かれる前に彼女の口を封じなくては。

 「今日の事は内緒よ」

 「は、はい」

 咄嗟に出た言葉はこれだけだったなんて。

 ちょっとだけからかうつもりで彼女の眼鏡をパッと外しちゃった。

 か、可愛い。

 もったいないな、どうしてコンタクトにしないのかしら?

 「すみません、眼鏡ないと見えないんです」

 「ねぇ、ちゃんと約束してくれたら眼鏡返してあげるわ」

 「約束します」

 そんな言葉だけでは信用できないわね。

 さっきまでの悲しい心が嘘のように悪戯心が芽生えていたの。

 私は、小さく微笑み眼鏡を掛けてあげてね……彼女の唇をなぞってみたのよ。

 「もし、約束やぶったりし・た・ら・このピンクの唇は私の・も・の・よ」

 ウフッ(笑) 困っているわね。
 
 「ま、守ります」

 目の前でアタフタしている様子を見ていたらなんだか可笑しくなってきちゃたわ。




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