幼なじみセンチメートル
暫く土手に佇んでいると、空から雨粒が落ちてきた。



「降ってきちゃった。今日天気予報で降水確率0%だって言ってたのに」

「梅雨だから仕方ねぇよ。…おら、本降りになる前に帰るぞ」



イノリは立ち上がってパンパンとお尻を払うと、家に向かって歩き出した。



このまま帰るだけじゃつまんないから、ちょっと甘ったれしてみようかな。



悪巧みを考えついた私は、その場にしゃがみ込んだ。



「何してんだよ。早く来い!」

「…お腹空いて歩けない」

「じゃあその辺に生えてる草でも食ってろ」



イノリは見向きもせず歩いて行ってしまう。



「紫陽花もあるぞー。カタツムリはエスカルゴって言って食えるらしいぞー」



エスカルゴは食用だもん。




私に背を向けたままプラプラと手を振るイノリを睨んでから

強くなる雨を見上げた。




この雨が去れば夏が来る。

今年の夏は何処に行こうかな。

5人で海に行きたいな。
あとお祭りとプールと…



その前に痩せなきゃなぁ。





そんな事を考えていると空しか映していなかった視界に、仏頂面のイノリが入った。



「のんきに空眺めてんじゃねぇよ。風邪ひくだろ、バカ」

「ねぇイノリ、私あと何キロ痩せれば丁度いいかな?」

「は?」



イノリが面倒くさそうに突き出してくれた背中に乗ると、イノリは立ち上がった。



そうだよ。コレコレ!

おんぶして欲しかったんだよ〜。



分かってるじゃん、イノリ。





と、イノリからしたら少々ウザい事を想いながらイノリの背中に揺られていた。
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