幼なじみセンチメートル
「で。お前はいつまでそうしてるつもりだよ」


「誰かさんのせいで腰抜けたの」


「…ったく、しょうがねぇな」



イノリはガシガシ頭を掻くと、私に背中を突き出した。


腰が抜けて少し震える体に力を入れて、イノリの肩に手を乗せた。




「ああ、お前腰抜けてんだよな」


「え?」



イノリはクルッとこちらに体を向け直すと、私を抱き上げてくれた。




「この方が恐くねぇだろ?」


「…うん」


「小便垂れるなよ?」




恐くないけど何だか恥ずかしい。


今更、何を照れるんだって感じだけど…。




ここが真っ暗闇で良かったよ。


きっと今、顔真っ赤。




「ねぇイノリ、もし静が腰抜かしてもこうやって抱っこしてあげた?」



…って!


私、何聞いてるんだろ。




ヤキモチ丸出しじゃん!



ヤダ、もう…。

自分で自分が嫌。





「ん〜…するかもな。してやらねぇと後がつっかえるだろ?」


「…サイテー」


「あ?」


「そういう思わせぶりな態度は最低よっ!」




そうやって、何の感情もないくせに優しくする。



そんなのは優しさとは言わないんだよ?





「まぁ、所詮俺だしな。興味のカケラもねぇ女にゃ優しくなんかしねぇよ」


「どーだか」


「何怒ってんだよ」



知らん!

こんな男、もう知らない!



変な女に無駄に優しくして好かれてストーカーされて、悩んで悩んでハゲてしまえ!





抱っこされながら怒っていると、上から何かが落ちてきた。



「ぎゃああああっ…ん…?」



ビックリした反動でイノリにしがみついた瞬間、何か柔らかいものが唇に触れた。



えっ…?


何…?何っ!?




今………


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