Hurly-Burly 【完】

お腹に回る腕にビックリして声を出そうと

思ったのに、口を塞がられた。

後ろからのため息に心臓が潰れる。

聞こえてくる足音が近付いてくる。

ちぃー君に後ろから抱きしめられてる

ような形で心臓が口から飛び出るのを

ちぃー君の左手があたしの口を押える。

こんなことは生まれて初めてかもしれない。

父さん以外の人には初めてだった。

後ろから抱きしめられるなんて・・・

「しっかし、居ねぇーな。

確かにこっちに走ってくとこ見た

って聞いたんだけどな。」

心臓の音の方が心配になる。

ちぃー君がどんな顔をしているのか

も分からずただただ押えられたまま

立ち去るのを見届けるしかなかった。

このままじゃ、あたしは心臓が爆破

しそうなんだけどと思っていたら、

「っち、アイツらの中に黒宮居たよな。

何でこんなとこに来てるか分からねぇー

けど、手合せ願いたかったぜ。」

ゴクリと息を呑む。

「俺はあの金髪相手にしたかったなー。」

息を潜めるなんてのはこんなに難しかったのか。

ちぃー君の心臓の音が微かに聞こえる。

ドクリと何かが音を立てて崩れるような、

「アイツらが星鈴のトップだろ?

関東仕切るっての聞いたぜ。」

な、何を言っておるのだ?

関東を仕切る?

もう都道府県に分かれているではないか。

「強そうに見えねぇーよな。」

その瞬間、ちぃー君の右腕に力が

入り拳を握るちぃー君にドキリとした。

後ろを振り返って見ても前髪で顔が

あまりよく見えなかった。

「けど、暴れたらすげーらしいぞ。

噂には人を殺したことがあるみてーな?」

誰かの声なんて届かなくて

あたしには何故かちぃー君が怯えてるように

思えて仕方なかった。
< 206 / 419 >

この作品をシェア

pagetop