Hurly-Burly 【完】
キリッとした目で奥ゆかしさのある彼女は
どこかのお嬢様なのかもしれない。
土曜日のこの時間はいつもここでゆっくり
過ごすのが日課だとか。
あたしの散歩コースにこんな美人さんが居た
なんて想像もしなかったよ。
参考書はそんなに得意ではないらしい。
やればやるとは言ってたけど、勉強するのが
そこまで好きではないとか。
お家の関係上やらなきゃいけないことに
なっているらしい。
「好きなことは出来ない。」
それって、辛いよね。
あたしが選ぶ進路だってそうだ。
甘えなんて許されない。
今はこうやって自由を与えられてるだけで、
未来のあたしだって彼女のように疲れてしまう
のだろうか?
「諦めた物の数が多ければ多いほど、
自分を失くしていくの。」
それって、自分を押し殺してるって意味だよね。
お嬢の世界なんてあたしにはよく分かんないけど、
それでも他人事だとは思えなかった。
いつか、あたしもそうやって諦めのつく
人生を歩むことになるんだろうか?
心の底からはきっと望んでない。
でも、それは心で留めておくだけでいい。
あたしが敢えて口に出して言うことじゃない。
「そういうの吐き出して見ればどうかな?」
大声で叫んだら案外スッキリすることもある。
「吐き出す?」
例えば、何だろう?
「馬鹿野郎ー!!」
川に向かって声を張り上げる。
声を出すと心の内がどこか晴れる。
曇りになってもいつか晴れるよ。
雨が降ってもいつか地は固まる。
それまで、ひたすら待ってればいい。
時々、鬱憤を晴らして。
心に水を与えよう。