Hurly-Burly 【完】
目を疑った。
犬と戯れてた人の顔なんて興味なかった。
だから、参考書にしか目がいってなかったのに
その子の顔を見た瞬間参考書の字すら読む気に
ならなかった。
「貴女、さっきから煩いんです。」
あたしの言葉は思ったこととは違って出てくる。
こんなことが言いたいわけじゃない。
「これはこれはすみませんでした。
どーぞ、これはお詫びのお菓子です。」
実際に聞くとその子の声が胸に響いた。
この子はあたしのことなんて覚えて
なんだろうな。
「何?」
あまり友達っていう友達が居なくて、
どう接すればいいのかよく分からなかった。
「いえ」
それでもその子はあたしに呆れることなく
話を続けた。
「あ、それ化学反応式が間違ってるみたいだよ。
書店に抗議しに言ったら認めたもの。
だから、それは問題文のミス。」
これもやってたのかと驚いた。
あたしは今だって彼女に勝てない。
「えへへ、それもうやったことあるんだ。
問題文が間違ってるのはそこだけだったと
思うけど、貴女も勉強好きなのね?」
あたしは勉強なんて好きじゃない。
他にやりたいことだってある。
普通に過ごしたいだけ。
一度でもいいから家を気にせず
過ごせる日があるならいいのに。
「はぁー」
自然とその子と会話が成り立って、
普段はため息さえ我慢してるのに
つい出てしまった。
「お姉さん、あたしで良かったら聞きますよ。」
お姉さんって貴女と一緒なのよって
言ったらこの子はどんな反応してくれるの?