D i a r y
子供のように眠る雨を抱きしめ、
長い間色々なことを考えた。
雨は不思議な女だった。
すごく美人なわけでも
スタイルがいいわけでもない。
でも、頭がよかった。
沢山の言葉を持っていた。
人間を救うことのできる人間だった。
その、気丈さやおおらかさに隠れた
危なっかしいまでの繊細さが
おれを惹きつけてやまなかった。
服も、歌手も、作家も、
好きになるものは
何でも同じだった。
雨は家族や友達のいないおれにとって
唯一の他者で、対象だったんだ。
一緒にいればいるほど心地よく、
溶け合っているような錯覚さえ覚えた。
「生まれる前は双子だったのかもね」
と雨は言っていた。
魂の、双子。
そんなものを信じてしまうくらいに、
特別な存在だったのだ。