同級生-Memories-
「立地は?」

「ん、ヤスの近くならどこでも。あ、駅近くでね」

不動産雑誌を一緒に見ながら、お互いの就職先へのアクセスを考えて中間地点を探す。

よさそうな物件がいくつかのっていたので、一緒に見に行くことにした。


「お二人ですと、2DKか2LDKのこちらはいかがですか?」

「え?」

不動産屋の窓口で紹介されたのは1人暮らしには広すぎるところで。

戸惑いながらも俺の顔を見ているクミにやさしく笑いかけるとますます難しい顔になってしまった。

「こちらはまだ新しくて、新婚さんにとても人気なんですよ」

「見ることはできますか?」

「え、ヤス?」

クミには予想外だったようで、俺の言葉にぎゅっと俺の腕を掴んできた。

「見るだけならいいだろ?」

実は、考えていなかったわけじゃなかった。

いつかは結婚もしたいと思っていたけど、この機会に一緒に住むのも悪くないんじゃないかって。

就職が決まった時に、クミの両親に同性の了承を得ようとも思っていたほど。

なかなかタイミングがなくて切り出せなかったけど、せっかくだから部屋だけでも見学したい。

不動産屋に紹介された物件は、駅から徒歩10分くらいのところで。

駐車場も1台付いていて、なかなか綺麗なアパートだった。
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