同級生-Memories-
少しショックを覚えたけど、今更引きさがることもできないし、そんなつもりもない。

「もうすぐ卒業だし、お互い社会人になると会える時間も限られてくるだろうし」

「うん、そうだよね…」

そっとクミの手を握ると、ぎゅっと握り返してくれて。

ただそれだけで、安心できてしまう。

「いつか一緒になりたいけど、今はその時じゃないと思うから」

「うん」

「でも、離れることもできないと思う。お父さんとお母さんにはきちんと俺から説明するから」

「…実はね、言われたの。一緒に住まないのか?って」

予想外のクミの言葉に、彼女の顔を見るとほんのり頬を赤くしてこちらを見ていた。

「お父さんがね、一緒に暮さないのかって」

かなりの驚きだった。

息子のようによくしてくれているとは感じていたし、俺自身も実の父親よりも会っている回数が多いくらいだ。

それくらい慕っていたし、よくしてもらっていたけど。

それとこれとは別物だと思っていたし、まさかそんな風に考えていたなんて。

「でもね、私一人がその気でもだめでしょ。それに私が言ったらヤスは私の言葉の通りにしてくれちゃうでしょ」

それじゃだめだと思ったから言わなかったの。

クミが恥ずかしそうに笑って俺に抱きついてきた。

「私も一緒に暮らしたい」

「ありがとう」
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