同級生-Memories-
「…クミ、もう終わりだ」

玄関先で深夜にする会話ではない。

わかっているけど、とても仲よく家の中にはいることなんてできそうにない。

それでも、疲れて帰ってきた俺は早く横になりたいと思っていたはずなのに。

「ヤス…ごめんなさい」

否定もしないんだ。

そう思うとなんだか虚しさだけがこみ上げて来た。

ため息をついてから家の中に入ると、昨日の朝家を出たときと何も変わらない風景。

ただ違ったのは、クミの部屋のベッドの上に、俺のものじゃない男性用の部屋着が綺麗に畳んで置いてあったことだった。

あの男は昨夜ここに泊ったということか。

クミがそんな事をするような女だとは思ってもみなかった俺は、とにかくショックで。

気持ちは冷めていたとはいえ、好きあって結婚したんだ。

その自分の妻が、家に知らない男を連れ込んでいたなんて。

とりあえず、数日間必要そうなものを大きいスーツケースに詰め込んで、荷物を簡単にまとめた。

「ヤス、出ていく…の?」

そんな俺の様子を遠慮がちに見ていたクミが、泣きそうな顔をして声をかけて来た。

今更そんな顔されても、もう戻ることなんてできないと思う。

それに、彼女も俺とよりを戻すことは望んでいるようには見えなかった。

「残りの荷物は近いうちに取りに来るから」

その後、大学の友人のつてで弁護士を紹介してもらい、たった半年の俺たちの結婚は幕を閉じた。
< 23 / 85 >

この作品をシェア

pagetop