同級生－Memories－
俺の視線を感じたのか、少し恥ずかしそうに指輪をそっと撫でてからやさしく微笑んだ。

嬉しそうな、恥ずかしそうな、そんなクミの顔を見て少しだけ昔を思い出したけど。

俺の気持ちが昔に戻ることはなくて、正直ホッとしている自分がいた。

別れた後も気にならないわけじゃなかったけど、よりを戻したいとか、会いたいとは思わなかった。

時々ふと思い出しては「どうしてるかな？」なんて思うことは、あったけど。

大きな指輪を嬉しそうに眺めている彼女をみて、幸せなんだなと安心できた。

「ふふ。綺麗でしょ？」

頬を赤くして指輪を見せてくれたクミが俺を見るその目は、俺のことを想っていてくれていたあの頃と同じような気がして。

そんなことはないと思うけど、少しだけ会話をしてからはできるだけ彼女を避けるようにしていた。

その後も定期的に開かれている同窓会と言う名の飲み会に、都合が合えば参加するようになり。

会社の仲間と違う、気を使わない昔からの友人と言うのは本当に貴重なんだと実感できた。

クミは数回に1度の割合で参加していたけど、俺とは特にしゃべることもなくて。

周りの友人たちに祝福されているクミを、複雑な気持ちで俺は見ていた。

近くにいた友人がからかうように声をかけて来たけど、なんだか一人だけ浮いているような気がしてトイレへ行くふりをして店を出た。
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表紙・目次

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