同級生-Memories-
「ここの免税店、ちょうどセール期間らしいよ。行こうか?」

「…うん、そうだね。楽しみ」

私、きちんと笑ってる?

心から楽しそうに出来ている?

「クミ?」

彼が私の頬を親指ですっと撫でてくれる。

「どうして泣いているんだ?」

「え?」

彼に言われて自分が泣いていることに初めて気がついた。

なぜだかわからないけど、あふれてくる涙。

泣いていることに気がついたからか、自分の意志とは関係なく涙が止まらなくなってしまった。

「クミ…」

そっと壊れものを扱うように、包みこまれるようにして抱きしめられた私は、そのまま彼の胸に顔を預けて涙が止まるまで泣き続けた。

私が泣きやむまで、やさしく髪を撫で続けてくれて。

こんな風に私が不安定なのは、今に始まったことじゃない。

ヤスと離婚する間少し前…ジュンペイさんと一緒に過ごすようになったころから私の心は少しだけ壊れたままだった。
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