同級生-Memories-
「良い子ですよ、佐智子ちゃん」

「うるさいよ」

週末に開かれる予定の新人歓迎会。

毎年この時期に開かれる恒例の飲み会だけど。

仕事以外の彼女を見ることが出来るのかと思うと、少しだけうれしく思える。

「先輩、素直になるといいですよ」

何事もなかったのように回覧を次の人のところへ持っていく後輩は、通り道にいる彼女に何やら話しかけて笑いあっていて。

…あんなふうに、普通に声をかけることすらできない俺は、まだ恋なんてできそうにないと実感してしまう。

後輩が見ても、俺が彼女を意識しているのはばれているんだから、きっとこの気持ちは間違いないんだと思う。

でも、だからと言ってどうしたらいいのだろうか。

仕事以外で彼女が俺に話しかけてくることもなければ、これだけ彼女を見ていても目が合うことなんてめったにない。

それはイコール彼女が俺に興味がないことを表していると思って間違いないはず。

「はぁ…」

小さく漏れたため息をかき消すようにして頭を振り、目の前の仕事に集中した。
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