同級生－Memories－
新入社員歓迎会当日。

後輩に背中を押されるようにして、座った場所の近くには、彼女。

「話しかけなきゃ始まりませんよ、先輩」

俺の耳元でそう囁いてちらりと彼女を見る後輩に釣られて、俺も見てしまった。

楽しそうに部長と話しをする彼女を。

「っつたく、自分のことになるとこれだから…」

俺の隣でビールを飲みながらぶつぶつ言っている後輩を無視しつつ、枝豆をつまみながら彼女の会話に耳を傾けていた。

声をかければ届く場所にいるけど、話しかけるタイミングなんて無い。

もっと男らしく、普通に話しかければいいんだろうけど、変に意識してしまってそれもできない。

小さくため息をついてビールを口にしたときに聞こえて来た言葉。

「彼氏ですかぁ？今は居ないですう」

目の前にある唐上げをほおばりながら、部長を適当にあしらっている彼女の言葉。

彼氏、居ないのか？

その言葉を聞いてから、自分がどうやって彼女の隣に座ったのかは覚えていないけど。

「彼氏居ないってほんと？」

ドキドキしているのが彼女にばれていないだろうか。

ソフトドリンクで口の中のものを飲み込み、不思議そうに俺の顔を見た彼女は、にっこり笑ってから「そうなんですよぉ」と楽しそうに話しかけてくれた。
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表紙・目次

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