たとえばそれが始まりだったとして
ご飯をお皿に移して、今度は卵。
ここでも油の代わりにバターをつかう。といた卵を流し込んでフライパン全体に広げて周りが焼けてきたら全体に大きく混ぜる。とろとろの卵が好きな私は、片面を軽く焼くだけだ。卵が千切れないように注意してご飯の上に乗せれば……出来上がり。
残念ながらフライパン上でご飯を卵でくるん、なんて技量は持ち合わせていない。まあ、見た目が酷いという程でもないし、美味しければそれで良し。
ケチャップをかけて、それをテーブルに運ぶ。
お茶も用意したし、さ、食べよう。
「いただきます」
いざ、口に運ぼうとしたところで、再びリビングのドアが開いた。
「あ、できたのね!」
お母さんはテーブル上のオムライスを目ざとく発見すると目を輝かせた。
すっかり着替えて、化粧もばっちり直してある。
「一口、食べてく?」
私は苦笑して、訊ねる。
「もらおうかな。小春のオムライスお母さんのより美味しいんだもん」
時間、ないんじゃなかったのかな。
そう、思うも、私の作ったオムライスを美味しそうに頬張るお母さんを見ていたら、まあいいか、という気になったのだった。
「うん、やっぱり小春のオムライスは美味しいわね。あ、じゃあお母さんもう行くから」
「行ってらっしゃい。洗い物はやっとくからいいよ」
「ありがとう。帰りはいつもくらいかしら。真希はもうすぐ帰ってくると思うから」
「わかった」
「じゃあ、行ってくるわね」
嬉しそうに出掛けてゆくお母さん。
私は小さく手を振ってそれを見送った。
「……食べよ」