たとえばそれが始まりだったとして
中学の時連んでいたヒロも東高に無事合格した。その他の友人も、公立なり私立なり各々が行きたい高校への合格が決まり、俺も今から部活が楽しみで仕方なかった。
だけど春休み、サッカーをしている時も、遊んでいる時も、ふとした瞬間にあの子のあの暗い表情が頭をちらついて。胸に正体不明のつかえを残したまま、俺は入学式を迎えることになる。
この時はまだ、好きとか、そういう感情ではなかった。ただどうしようもなく気になる、という感じで。今にしてみれば、それはもう好きの一歩手前であったのだろうけど。
入学を果たして学生生活を送っていると、校内で何度か彼女を見掛けるようになった。少しだけ短くなった髪に、真新しいセーラー服。知らず知らず目で追っている自分がいた。学校での彼女はいつも友人二人と楽しそうにじゃれ合っていて、それを見て、今はちゃんと笑っているんだなと俺は安心したような気持ちになった。
それから段々と彼女のことを知りたいと思うようになって、初めて名前も知らない事に気が付いた。彼女を見る度に自分の中で広がる感情。気持ちを自覚するのに、そう時間は掛からなかった。
そして翌年の春、告白という形により俺は彼女と繋がりをもつことになる。