たとえばそれが始まりだったとして
そんなお姉ちゃんも昔は恋多き乙女というやつで、彼氏が変わる度に私に紹介してくれた。
紹介されるのはわりと頻繁で、だからといって遊びだったわけではない。付き合ってた人みんなのことを、ちゃんとお姉ちゃんは好きだった。これは間違いない。
でも、だからこそわからなかった。
お姉ちゃんは、いつも別れてから次の週には、新しい彼氏がいた。可愛いから、モテるのだ。それはいいとして、好きだった人と別れて次の週には違う人、って、そんなすぐに気持ちの切り換えって出来るものなのだろうか。人それぞれってのもあるかもだけど。
あるいは、お姉ちゃんは寂しいのかもしれない。常に恋をしていないといられない性分なのかもしれない。なんにしろ、恋愛経験ゼロの私に知る術はない。
それから、友達にもお姉ちゃんと似た子がいた。
その子は、友達の贔屓目なしに見ても可愛かった。睫毛が長くて細っこくて。当然ながらモテた。
その子も、常に恋をしている状態だった。誰々が好きだって話をよく聞かされて。付き合った事もあった。だけど、付き合っていた人と別れてからとか、好きな人が違う人を好きだとわかった時とか、それからの切り換えが早かった。誰々が好きだったんじゃないの? って思うくらい。
私の周りでは、恋の嵐が吹き荒れていた。私はさながら台風の目。めまぐるしく変化する恋をひとり傍観者の立場で黙ってみているだけの存在。
両親とかお姉ちゃんとか友達とかのせいにはしたくない。
そんなことで色恋を拒否してしまう自分が悪いんだろう。
そう、今日だって拒否したはずなのに。
なのに、彼は。
桐原君は。
あきらめられないと言ったんだ。