たとえばそれが始まりだったとして


私は気圧されたのかもしれない。
自分はマイペースなほうだと思っていたけれど、私はこの時完全に呑まれてしまっていたんだ。

彼、桐原修一に。

「ちゃんと家まで自転車で来るなら……」

だから、こんな返事をしてしまったんだ。

それを聞いた時の桐原君は、本当に嬉しそうで、私は青空みたいな笑顔だと思った。


でも。
私は昨日彼に告白されて断った。私達はそういう関係なのに、一緒に登校することが赦されるのだろうか。桐原君は喜んでくれたけれど、本当に桐原君のためを想うなら、もう一度はっきり断るべきだったのではないか。果たして私の判断はこれでよかったのだろうか。

桐原君の笑顔を見つめながら、私の心は複雑だった。

学校に到着して部室へ寄って行くという桐原君とわかれても、結局気分は晴れないままで、私は重い足取りで教室へと向かったのだった。



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