たとえばそれが始まりだったとして

告白



寝坊した。
めったに寝坊しない私が、なぜかこの日は起きられなかった。

理由は明白、目覚まし時計をセットし忘れたから。私のお気に入り目覚ましの熊のまーくん。

『朝ですよー起きて下さーい。起きないとぼく困っちゃう』

そういつもなら起こしてくれるはずのまーくんは、今日は私を起こしてはくれなかったみたいだ。
他に起こしてくれる人はいない。お母さんはもう仕事に行ってるし、お姉ちゃんは昨日から帰って来てないはず。

ベッドの上で時計を確認すると、なんと時刻は七時五十分。
八時過ぎには家を出ないと遅刻確定。密かに皆勤賞を狙う身としては、遅刻は避けたいところだ。

与えられた時間は十分。
さて十分で何ができるか。
頭の中で計算式が組み立てられる。
顔を洗って歯を磨いて着替えをして化粧をして髪を整えてご飯を食べて。
消去法で化粧以下は省く。朝ご飯抜きはきついけど仕方ない。

五秒でそれを判断すると、私は顔を洗いに洗面所へと駆け出した。



◇◆◇



「おはよー」

教室に入って、適当に挨拶を交わす。遅刻はもちろん免れた。
自分の席に着いて鞄をあさっているところで、友達のみーこと遠藤がやって来る。

「おはよ、ハル!」

この、やたらとテンションの高いのがみーこ。お団子ヘアーがマイブームらしい。背がちっちゃいから似合ってる。今日も可愛いな。

「珍しい。ギリギリじゃない。寝坊でもしたの?」

大人な雰囲気のロングヘアーが遠藤。なぜか名字が定着。きれいってタイプの美人さん。

「おはよー。うん、まーくんがね……いや、目覚ましセットすんの忘れちゃって」

そんな女の子な二人と友達な私、春日原小春。春ではなく十一月生まれ。名前は気に入っているのだけど、名前負けしてるなーと思う今日この頃。小春なんて名前をもらうほど可愛くなければ女の子らしくもない。

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