たとえばそれが始まりだったとして


一般的に考えて、ふった相手につきまとわれるっていうのは、いい気はしないよなー。
今朝一緒にいた感じでは、好かれてないのは間違いないだろうけど嫌がってる風でもないようにみえたのだけど自信を持ってそうと言えるだけの根拠がない。

俺は彼女について知らないことが多すぎるから。
だからこそ、彼女について知る時間がほしかった。もちろん純粋に一緒にいたいっていうのもあるけど。
俺の行動が全部裏目に出て、彼女を泣かせてしまったのだとしたら。俺といることが泣くほど嫌だったのだとしたら――。

「後悔してるの?」

そんな俺の心中を察したかのように、今まで黙っていたヒロが訊ねてくる。

何も言い返せない俺にヒロは更に言い募る。

「じゃあなに、修一はよかったわけ、他のヤローに告白先越されちゃっても? 彼女が自分じゃない誰かと手繋いだりキスしたりそれ以上のことして幸せそうにしてるの、何もしないで指をくわえて見てるだなんて出来たの?」

ヒロの言ってることはもっともだった。
俺はずっと彼女をみてきた。けど一年の時はクラスが離れていたせいでお互い何の接点ももたないまま終わってしまった。だから今年のクラス替えで彼女が隣のクラスだとわかった時は嬉しかった。ヒロにはクラスが隣になれたくらいで喜んでんじゃねーよと言われたけど、隣のクラスってことは体育が合同になったり廊下ですれ違う頻度も異常なくらい多いというわけで。俺は何らかのアクションが起こるのを密かに期待していたんだ。それをヒロに言ったら、馬鹿じゃないのそんな人生都合よくいくわけないじゃんと文字通り馬鹿にされた。そして実際ヒロの言った通りで、二年になってひと月以上経過してるのに彼女との間に全く進展はなく、俺はヤキモキする日々を送っていた。

そんな時だった。
同じクラスのやつが彼女に好意をもっていると知ったのは。

ある日の昼休み、ヤロー同士の会話の中に突如入ってきた彼女の名前。俺は素知らぬ顔をしながら聞き耳を立てた。


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